フェルミ推定では、すべての数字を仮定で置く必要はありません。人口や世帯数、コンビニの店舗数のような公表値は「覚えている数字」として使ってよく、その分だけ仮定の数が減り、面接官に突っ込まれる箇所も減ります。ここでは例題で繰り返し使う基礎数値を、覚え方と使いどころつきで整理します。
人口・世帯・年齢別人口・国土・道路・店舗数といった公表値は、仮定ではなく「覚えている数字」として使えます。覚える数字を土台にして仮定の数を減らし、残った仮定だけを分解と検算で守るのが、突っ込まれにくいフェルミ推定の組み立て方です。
覚える数字と仮定する数字を分ける
公表値を使うときも、出典・基準年・対象範囲を説明できることが必要です。確認できない数字は「計算用の仮定」として置きます。一方、「1店舗で1日150個売れる」のような仮定は、客数×購入率のように観察できる量まで分解し、別の角度からも確かめて守る必要があります。
覚える数字は桁と概数で十分です。総人口を1億2,435万人と覚える必要はなく、1.2億人で計算が進めば問題ありません。大事なのは、どの数字が覚えておくべき土台で、どの数字が自分で置いた仮定なのかを、自分の中で区別して話せることです。
覚えていない数字が出てきても慌てる必要はありません。例えばコンビニの店舗数を忘れても、「住宅地なら徒歩10分圏に1店、その圏内に約2,000人」と商圏から6万店前後を出せます。覚えた数字と、忘れたときの導き方をセットで持っておくと安心です。
人口と世帯
ほとんどのフェルミ推定は、人口か世帯数から始まります。猫や冷蔵庫、車のように世帯単位で持つものは世帯数、スマホや眼鏡のように個人が持つものは人口を母数にします。
- 総人口 約1.2億人総務省 人口推計
- 1億2,000万人台前半。計算では1.2億人で十分です。
- 世帯数 約6,000万世帯住民基本台帳
- 1.2億人 ÷ 平均2人で6,000万と覚えると楽です。国勢調査では約5,600万世帯(平均2.2人)で、どちらの定義でも桁は同じです。
- 単身世帯 約2,100万世帯国勢調査
- 世帯の約4割が一人暮らし。洗濯機やコインランドリー、ペット飼育の推定で「単身は持たない・飼わない」層を切り出すときに使います。
- 戸建てと集合住宅 ほぼ半々住宅・土地統計調査
- 住宅の約5割強が一戸建て。エアコンの台数や猫の飼育率のように、住居の形で答えが変わる問題で使います。
- 人口の約7割が市街地(人口集中地区)に住む国勢調査
- 市街地の面積は国土のわずか3〜4%(約1.3万km²)。都市部と地方で密度を分ける問題(郵便ポスト、公園、自家用車)の根拠になります。
年齢別人口と学年
保有率や利用率が年齢で変わる問題では、年齢別の人口が必要です。スマホ、眼鏡、自転車、投票率などが典型で、区分の人口を足して総人口を超えていないかの確認にも使います。
- 0〜14歳 約1,400万人総務省 人口推計
- そのうち未就学が約500万人、小学生が約600万人、中学生が約300万人。
- 15〜64歳 約7,400万人総務省 人口推計
- いわゆる生産年齢人口。
- 65歳以上 約3,600万人総務省 人口推計
- 人口の約3割。75歳以上だけで約2,000万人います。
- 1学年 0歳は約70万人、20〜30代は約120万人人口動態統計・人口推計
- 出生数は年70万人前後まで減っていますが、いま結婚・就職する世代は1学年120万人前後います。結婚式や就職・進学の問題では、どの世代の1学年かを意識します。
- 高校生 約300万人、大学生 約300万人学校基本調査
- 小学生から大学生までの「学生」は合わせて約1,500万〜1,700万人です。
- 婚姻 年約50万組人口動態統計
- 正確には48万組前後。人口1,000人あたり約4件と覚えても出せます。
働く人と事業所
通勤・職場・業務用の需要を考えるときは、働く人の数と事業所数を使います。家庭用と業務用を分ける問題(冷蔵庫、エアコン)の業務用側の母数になります。
- 就業者 約6,700万人労働力調査
- 人口の半分強。通勤・通学者は学生を加えて約7,000万人とみなすと、平日の外出需要を数えやすくなります。
- 事業所 約500万カ所経済センサス
- 9割以上は従業員数十人以下の小規模事業所です。オフィスビルの大規模事業所は数が少ないので、平均値で置くときは小規模に引っ張られることを意識します。
- 飲食店 約50万〜60万店経済センサスなど
- 人口200人に1店前後。飲食店向けの冷蔵庫や業務用設備の推定で使います。
国土と土地利用
面積の問題は国土から比率で絞り込みます。地形上の平地と統計上の可住地は区別します。森林を除いて求めた可住地面積から森林率を逆算すると、独立した推定にはなりません。
- 国土面積 約38万km²(3,800万ha)国土地理院
- 1km² = 100haの換算もセットで覚えます。
- 可住地 約3割(約12万km²)総務省 統計でみる都道府県のすがた
- 山林・湖沼を除いた人が住める土地。道路の総延長や耕地を考える出発点になります。
- 東京都 約2,200km²、人口約1,400万人東京都
- うち23区が約620km²。西側の多摩山地と島しょ部(約400km²)は市街地ではない点に注意します。
- 米の消費 1人年約50kg、収量 1haあたり約5t農林水産省
- 50kgは生米相当の年間重量として扱い、炊飯後の茶碗1杯の重量と混同しません。収量を使うときも玄米・精米等の基準をそろえます。
道路と交通
道路沿いに立つもの(電柱・信号)や、車にまつわる問題で使う数字です。道路は「総延長」と、そのうち信号が付くような「幹線」を分けて覚えます。
- 道路の総延長 約128万km国土交通省 道路統計年報
- 可住地12万km² × 1km²あたり約10kmでも出せます。
- 国道+都道府県道 約19万km国土交通省 道路統計年報
- 総延長の約15%。信号が付く幹線道路はこの範囲だと考えます。高速道路は約1万km。
- 自動車の保有 約8,000万台(乗用車約6,000万台)自動車検査登録情報協会
- 軽自動車を含みます。残りの約2,000万台がトラック・バンなどの貨物車です。
- 新車販売 年約480万台日本自動車販売協会連合会
- 保有6,000万台 ÷ 新車から廃車まで約15年でも、乗用車の約400万台が出せます。
- 運転免許保有者 約8,200万人警察庁
- 自家用車の台数の検算に使います。
- タクシー 約20万台国土交通省など
- 法人タクシーが約17万台、個人タクシーが約3万台。
- 新宿駅の乗降 1日約350万人(コロナ前)各鉄道事業者
- 世界一の乗降客数。他の駅の利用者数を推定したときの比較対象になります。
店舗・施設の数
店舗数は、売上や販売数の推定で「店舗数 × 1店あたり」の型を使うときの土台です。覚えていればそのまま使い、忘れたら商圏人口で割って出します。
- コンビニ 約5.5万店日本フランチャイズチェーン協会
- 1店あたり約2,200人。忘れたら「徒歩10分圏に1店・約2,000人」から6万店前後を出せます。平均日販は約50万〜60万円で、上位チェーンの標準店は60万円台。
- スーパー 約2万店日本スーパーマーケット協会など
- 1店あたり約3,000世帯。自転車で10分ほどの範囲に1〜2店という実感と合います。
- ドラッグストア 約2万店日本チェーンドラッグストア協会
- スーパーとほぼ同数まで増えました。食品も扱うので、日用品だけでなく飲料・おにぎりの販売チャネルにもなります。
- 郵便局 約2.4万局日本郵便
- 小学校とほぼ同じ数です。
- 小学校 約1.9万校、中学校 約1万校学校基本調査
- 通学路の信号や子ども向けサービスの推定で使います。
- 病院 約8,000、一般診療所 約10万厚生労働省 医療施設調査
- 病院(20床以上)は数が少なく、街のクリニックが診療所です。
- 美容室 約27万軒厚生労働省 衛生行政報告例
- コンビニの約5倍で、個人経営の小さな店が大半です。
- 映画館 約600サイト(約3,600スクリーン)、入場者 年約1.5億人日本映画製作者連盟
- 1人あたり年1回強。1館あたりの来場者の検算に使います。
- スターバックス 約1,900店、マクドナルド 約3,000店各社の公表資料
- 全社売上を店舗数で割ると1店あたり売上の検算になります。
暮らしと消費
市場規模の推定で、1人あたり消費や頭数の土台になる数字です。
- 犬 約700万頭ペットフード協会
- 飼育世帯は1割弱。猫は室内で多頭飼いしやすく犬より多い、という構造とセットで覚えます。
- 訪日外国人 年約3,000万人超日本政府観光局
- 外食や観光消費の推定で、国内需要に上乗せするときに使います。
- コンビニ業界の売上 年約12兆円日本フランチャイズチェーン協会
- 店舗数で割ると1店あたり年約2億円、日販約55万円になります。
- エアコンの国内出荷 年約900万台日本冷凍空調工業会
- 出荷×使用年数は保有が安定している場合の近似です。家庭用・業務用の範囲と、室内機・室外機・一式の単位をそろえて比較します。
- 食品ロス 年約470万t農林水産省・環境省
- 事業系と家庭系がほぼ半々です。
- 介護職員 約215万人厚生労働省
- 需要の伸びに対し、数十万人規模の不足が見込まれています。
頻度と単位の換算
消費系の問題では、1日・1週間・1年の頻度に直す力が欠かせません。週1回なら年間約50回、月1回なら年間12回、毎日なら年間365回と、暗算しやすい数字に変換して扱います。
面積は1km² = 100ha = 100万m²、1ha = 1万m²。金額は1万円 × 1万 = 1億円、1億円 × 1万 = 1兆円です。桁を外しやすい換算は、計算の途中で声に出して確認すると安全です。
基礎数値の更新のしかた
基礎数値は丸暗記ではなく、問題を解くたびに使った数字を自分のメモに残して更新するのが実戦的です。同じ数値を繰り返し使ううちに感覚として身につき、本番でも迷わず使えるようになります。
統計は年ごとに多少動きますが、フェルミ推定で求められているのは桁と概数です。大きく外れていなければ、最新値でなくても問題ありません。
人口・世帯・年齢別人口・国土・道路・店舗数といった公表値は、仮定ではなく「覚えている数字」として使えます。覚える数字を土台にして仮定の数を減らし、残った仮定だけを分解と検算で守るのが、突っ込まれにくいフェルミ推定の組み立て方です。