病院の運営コストを下げるには|ケース面接の回答例と進め方
医療品質を保ちながら病院の運営コストを下げる施策を提案してください。
自分で設定する論点
- 削減対象のコスト範囲と守るべき品質を自分で定義する
- 発生量、単価、工程、稼働率のどこに無駄があるか分解する
- 短期で削れるものと中長期で仕組みを変えるものを分けて考える
- 「医療の質は落とさない」の具体的な意味を自分で定義する
面接官への確認例
- 対象は地方の中規模総合病院(300床・慢性赤字)と置いてよいか
- 「質を保つ」は診療アウトカムと安全性の維持、と定義してよいか
- 人員削減(医師・看護師)は原則避ける前提か
行き詰まったときの段階ヒント
ヒント1を開く
病院のコスト構造: 人件費5割超、医薬品・材料費25%、委託費・設備で残り。ただし医療者の人件費は「質」そのもの
ヒント2を開く
削るべきは医療行為ではなく、医療者が医療以外に使っている時間(書類・調整・搬送)と、調達・在庫の非効率
ヒント3を開く
「コスト削減」と「収益改善(病床稼働・加算取得)」はセットで考えると効きが大きい
考え方
- コストを人件費・材料費・委託費に分け、「質に直結する部分」と「間接部分」を切り分ける
- 医療者の時間の使い方(本来業務比率)に注目し、タスクシフトと事務効率化を軸にする
- 調達(共同購買・後発品)と設備稼働という非人件費側も並行して設計する
解答の流れ
- 前提: 300床の中規模総合病院、医業収支が赤字。質(診療アウトカム・安全)を落とさず3年でコスト5%削減、と置く
- 分解: コスト=人件費55%+医薬品・材料25%+委託・設備20%。人件費は削れないが「使い方」は変えられる
- 現状分析: 看護師の業務の3割が記録・搬送・物品管理などの周辺業務。医薬品は院内在庫が過剰で期限切れ廃棄も発生
- 打ち手: A案 タスクシフト(医師事務作業補助者・看護補助者の配置、音声入力による記録時間短縮)、B案 調達改革(地域の病院group共同購買、後発医薬品比率の引き上げ、SPDによる在庫圧縮)、C案 委託費の相見積もりと院内物流・清掃仕様の見直し
- 評価: A案は残業減で人件費を下げつつ、医療者の本来業務時間を増やし質はむしろ向上。B案は材料費の5〜10%削減の実績が多い。C案は着実だが規模は中
- 推奨: A案とB案を柱に、削減益の一部を医療者の処遇へ還元し、離職防止(採用コスト削減)まで循環させる
回答例
【前提】300床の地方中規模総合病院、医業収支は赤字とし、診療アウトカムと安全性を落とさずに3年で運営コストを5%削減する目標を置きます。 【現状分析】病院のコストは人件費が55%、医薬品・材料費が25%、委託費・設備が20%という構造です。人件費の頭数を削れば質と安全に直結するため、削るべきは「医療者の時間の使い方」です。実態として、看護師の業務時間の約3割は記録・物品搬送・書類作成などの周辺業務に費やされ、残業の主因になっています。また医薬品・材料は診療科ごとの個別発注で、過剰在庫と期限切れ廃棄が発生しています。 【ボトルネック】医療者が医療以外に使う時間の多さと、調達・在庫管理の分散です。 【打ち手】1. タスクシフトと事務効率化: 医師事務作業補助者・看護補助者の配置、記録の音声入力・テンプレート化で、残業を削減しつつ医療者を本来業務に集中させる。2. 調達改革: 近隣病院との共同購買で価格交渉力を上げ、後発医薬品比率を引き上げ、SPD(院内物流一元化)で在庫を圧縮する。3. 委託費の見直し: 清掃・給食・警備の仕様整理と相見積もり。 【評価と推奨】タスクシフトは補助者の人件費を差し引いても残業減で純減になり、医療者の疲弊が減ることで質と定着率はむしろ上がります。共同購買・後発品は材料費の5〜10%削減の実績が多い定石です。推奨は、この2本柱で5%削減を達成し、削減益の一部を処遇改善へ還元して離職・採用コストの悪循環を断つ、というコスト削減と質向上を両立させる設計です。
打ち手の評価表
| 打ち手 | Impact | Feasibility | 期間 | リスク |
|---|---|---|---|---|
| タスクシフト・記録業務の効率化 | 高 | 中 | 1〜2年 | 補助者の採用難・現場の抵抗 |
| 共同購買・後発品・SPD導入 | 高 | 中 | 1年 | 他院との調整・切替時の混乱 |
| 委託費の仕様見直し・相見積もり | 中 | 高 | 6カ月 | 委託品質の低下 |
よくあるミス
- 人員削減から入り、質・安全の制約と矛盾する
- コスト構造を置かず、思いつきの節約リストになる
- 収益側(病床稼働・加算)との一体設計という視点がない
面接官の深掘り質問
コスト削減より収益改善の方が効くのでは?
その通りで、病床稼働率の改善・施設基準加算の取得・地域連携による紹介患者増は効果が大きい。ただし需要側は制御しにくいため、コストと収益の両輪で答える。
電子カルテの刷新は投資すべきですか?
記録時間・転記ミス・薬剤過誤の削減効果と、数億円の投資・移行負荷を比較する。単体更新でなく業務フロー再設計とセットなら回収可能性が上がる、と条件付きで答える。
評価ポイント
- 「質を保つ」を具体的に定義してから議論できた
- 人件費の頭数でなく時間の使い方に着目できた
- 共同購買・後発品・SPDなど調達側の定石を出せた
- 削減益の再投資(処遇→定着)という循環まで設計できた