電力の需給ひっ迫を緩和するには|ケース面接の回答例と進め方
夏冬の電力需給ひっ迫を緩和する施策を、政策の立場から考えてください。
自分で設定する論点
- 不足や余剰を測る指標、地域、時間帯を自分で定義する
- 需要量、供給量、配置、マッチング効率に分けて考える
- 品質、安全性、制度、担い手確保の制約を自分で置く
- ひっ迫が起きるのは年間数十時間のピークだけ、という構造を踏まえる
面接官への確認例
- 対象は短期(今夏・今冬のピーク対応)か、中期の構造改善か(両方を分けて扱ってよいか)
- 電源構成(原発再稼働など)の政治判断はスコープに含むか
- 「緩和」の指標は予備率の確保でよいか
行き詰まったときの段階ヒント
ヒント1を開く
ひっ迫は「年間の総量」ではなく「特定日の特定時間帯(夏の夕方・冬の朝)のピーク」の問題。数十時間のために設備を持つのは非効率
ヒント2を開く
レバーは3つ: 供給を増やす(電源・送電)、需要を動かす(DR: ピークシフト)、貯める(蓄電池・揚水)
ヒント3を開く
需要側は「節電のお願い」より、価格・インセンティブで自動的に動く仕組み(DR契約・スマート家電)が効く
考え方
- ひっ迫を「ピーク時間帯の需給ギャップ」と定義し、総量の問題と区別する
- 供給・需要・貯蔵の3レバーで短期と中期を分けて設計する
- 精神論の節電でなく、価格とテクノロジーで需要を自動制御する方向を軸にする
解答の流れ
- 前提: ひっ迫は夏の夕方・冬の朝の計数十時間に集中。短期(1〜2年)は予備率3%割れの回避、中期(5年)は構造的な余裕確保、と分ける
- 分析: 太陽光の増加で夕方(日没後)に供給が急減する構造。ピークのために火力を維持するのは高コスト
- 打ち手(短期): A案 デマンドレスポンスの拡大(大口需要家とのDR契約・家庭向け節電ポイントの常設化・スマートエアコンの自動制御)、B案 休止火力の計画的な待機契約
- 打ち手(中期): C案 蓄電池・揚水の拡充と、太陽光の夕方シフト(西向き設置・蓄電併設)、D案 送電網の地域間連系強化で全国融通を広げる
- 評価: A案は最も安い「発電しない発電所」。B案は保険コスト。C・D案は構造対策で投資が大きいが不可避
- 推奨: DRの制度化・自動化を軸に、短期は待機電源で保険をかけ、中期は蓄電と連系線に計画投資する
回答例
【前提】電力ひっ迫は年間の総量ではなく、夏の夕方と冬の朝の計数十時間のピークに集中する問題と定義します。短期(1〜2年)は予備率3%割れの回避、中期(5年)は構造的な余裕の確保、と時間軸を分けます。 【現状分析】太陽光の導入拡大で昼は供給が潤沢な一方、日没後の夕方に供給が急減する構造ができています。この数十時間のピークのために火力発電所を維持するのは極めて高コストで、休廃止が進んだ結果、予備力が薄くなっています。 【ボトルネック】ピーク時間帯だけの需給ギャップに対し、「需要を動かす」「貯めて時間をずらす」仕組みが未整備なことです。 【打ち手】短期: 1. デマンドレスポンス(DR)の本格化: 大口需要家との削減契約(発動時に対価を払う)、家庭向け節電ポイントの常設化、スマートエアコン・給湯器の自動制御プログラム。2. 休止火力との待機契約による保険的な供給力確保。中期: 3. 系統用蓄電池・揚水発電の拡充と、太陽光の蓄電池併設への誘導で夕方に電気をシフトする。4. 地域間連系線の増強で、余っている地域から足りない地域への融通量を増やす。 【評価と推奨】DRは「発電しない発電所」と呼ばれ、ピーク対策として最も安価です。精神論の節電要請と違い、価格と自動制御で確実に動きます。待機火力は保険料として割り切ります。中期の蓄電・連系線は投資が大きいものの、再エネ主力化と両立する唯一の構造解です。推奨は、DRの制度化・自動化を軸に短期を凌ぎ、蓄電と送電網へ計画投資する二段構えです。
打ち手の評価表
| 打ち手 | Impact | Feasibility | 期間 | リスク |
|---|---|---|---|---|
| DRの制度化・家庭の自動制御 | 高 | 高 | 1〜2年 | 発動頻度が高いと参加者が疲弊 |
| 休止火力の待機契約 | 中 | 高 | 1年 | 維持費用と脱炭素との整合 |
| 蓄電池・地域間連系線への投資 | 高 | 低 | 5〜10年 | 投資規模と費用負担の設計 |
よくあるミス
- 「節電を呼びかける」という精神論が主軸になる
- 発電所新設だけを語り、リードタイム(10年単位)と数十時間のための投資という非効率に触れない
- ピークの時間帯構造(夕方)を知らず、昼の太陽光で解決すると誤解する
面接官の深掘り質問
電気料金の値上げで需要を抑えるのはどうですか?
一律値上げは逆進的で必要な需要まで削る。効くのは時間帯別料金(ピーク高・オフピーク安)で、需要を「減らす」でなく「ずらす」価格設計、と区別して答える。
EVの普及はひっ迫を悪化させますか?
無秩序な夕方充電は悪化要因だが、制御すれば夜間充電+V2Hで巨大な蓄電池網になる。充電タイミングの制御インフラが分かれ目、と両面で答える。
評価ポイント
- 総量でなくピーク数十時間の問題と定義できた
- 夕方の供給急減という再エネ時代の構造を理解していた
- 節電のお願いでなく、価格・自動制御のDRを軸にできた
- 短期の保険と中期の構造投資を分けて設計できた