ケース面接ジム
コンサルの基礎

コンサルが「高級文房具」と揶揄される理由 ― 批判の中身と、そう呼ばれない人の違い

コンサルティング業界について調べていると、「高級文房具」「パワポ職人」といった揶揄に行き当たることがあります。高いフィーを払っているのに、出てくるのは見栄えのよい資料だけではないか、という批判です。この記事では、この言葉がどこから生まれたのか、批判が当たっている場合と外れている場合をそれぞれ整理し、同じファームの中でも「高級文房具」と呼ばれない人が何をしているのかまで踏み込んで解説します。

「高級文房具」とは何を指す揶揄なのか

「高級文房具」は、高額な報酬を受け取りながら、社内の人間でもできる資料作成や情報整理しかしていないコンサルタントを皮肉って呼ぶ言葉です。文房具のように誰でも使える道具レベルの働きしかしていないのに、値段だけが高いという意味が込められています。

近い意味の言葉として「パワポ職人」「お絵描き」「高級派遣」といった表現も使われます。いずれも、見栄えのする成果物は出てくるが、中身の判断材料が増えていないという不満を指しています。

重要なのは、この揶揄の焦点が資料を作ること自体に向いているのではなく、支払った金額と提供された価値の釣り合いが取れていないという点にあることです。同じ資料でも、それが意思決定を変えるものであれば批判は生じません。

この言葉はもともとクライアント企業の側から出てきた表現ですが、業界内でも自嘲的に使われることがあります。現場のコンサルタント自身が、自分の仕事がそう見えていないかを気にする文脈で口にすることも少なくありません。

この言葉が生まれた背景 ― 単価と作業内容のギャップ

コンサルティングの請求は、投入する人数と期間に単価を掛けた形で決まることが多く、経験の浅いメンバーであっても月あたりの単価は事業会社の給与水準から見ると高い水準になるとされています。この構造上、投入された人数と期間がそのまま費用に跳ね返ります。

その金額を払った結果として出てきたものが、社内にすでにある情報を整理し直した資料だけだった場合、発注した側は費用に対する納得感を持てません。「この資料に数千万円払ったのか」という感覚が、高級文房具という表現に凝縮されていると言えます。

近年はコンサルティング市場の拡大に伴って各ファームが採用を大きく増やしたとされ、経験の浅いメンバーが早い段階で前線に立つ場面が増えたことも、この不満が語られやすくなった一因として挙げられます。人員が増えれば、平均的な経験値は下がりやすくなるという構造的な問題です。

つまりこの揶揄は、特定の個人の怠慢というより、業界の価格構造と拡大局面が重なったときに生じやすい現象として理解しておくのが実態に近いでしょう。

「高級文房具化」はファーム側だけの問題ではない

ファーム側の事情としては、まず稼働率の維持という制約があります。所属するコンサルタントの稼働が空くこと自体が損失になるため、案件の内容を厳しく選びにくい構造があるとされています。結果として、本来なら社内で完結できる作業を引き受ける形の案件が生まれることがあります。

採用の拡大によって育成が追いつかず、論点設定の経験が十分でないメンバーが担当領域を任されるケースも指摘されます。この場合、指示された資料を丁寧に作ることはできても、そもそも解くべき問いを組み替える提案までは踏み込めないという状態になりやすくなります。

一方で、クライアント側にも要因があります。何を解決したいのかが曖昧なまま「とりあえず現状を整理してほしい」と発注されれば、出てくるものは整理された資料になります。発注の目的が資料であるなら、成果物が資料になるのは当然の結果です。

社内で結論がすでに決まっており、外部の第三者による裏づけが欲しいだけの依頼、あるいは役員会向けの説明資料を作ってほしいという依頼も実際に存在します。こうした依頼に応じた成果物が「高級文房具」と評されるのであれば、批判の一部は発注の設計そのものに向くべきものだと言えます。

批判が当たっている場合 ― 「整理しただけ」で終わる仕事

批判が正当に当てはまるのは、社内にある情報を集めて並べ替えただけで、新しい判断材料が一つも加わっていない成果物です。読んだ後に「知らなかったことがない」「意思決定が何も変わらない」状態であれば、その資料に高い費用を払う理由は乏しくなります。

一般的なフレームワークに当てはめただけで、その企業固有の事情が反映されていない分析も同様です。3Cや SWOT の枠に情報を配置することは誰でもできますが、そこから何が言えるのかという示唆がなければ、枠の埋め方が整っているだけの資料になります。

打ち手の抽象度が高すぎるパターンも典型です。「営業力を強化する」「デジタル活用を推進する」といった水準で止まっており、誰が、いつまでに、どの制約の中で何をするのかまで落ちていなければ、受け取った側は実行に移せません。

現場を見ずに机上の分析だけで結論を出し、実行可能性の検証がないケースも批判の対象になります。こうした成果物は、たしかに社内の企画部門が作るものと本質的な差がなく、外部に高額な費用を払う意味を説明しづらいものです。

一方で、資料を作る仕事そのものは無価値ではない

誤解を避けるために押さえておきたいのは、構造化された資料が意思決定を速める実務的な道具として機能する場面が確実にあるということです。部署ごとに散在していた情報を1枚に集約し、比較できる形にすること自体が、議論を前に進める価値を持つ場合があります。

特に大企業では、部門をまたいだ合意形成に共通の土台が必要になります。誰かがその土台を作らなければ、各部門が別の前提で議論を続けることになります。この作業には相当な時間と、利害から距離を置いた立場が求められるため、外部に委ねる合理性がある場面もあります。

社内の人間が言うと角が立つ話を、外部の第三者が事実として整理して示すことで前に進むケースもあります。「お墨付きが欲しいだけの依頼」は批判されがちですが、組織を動かすための現実的な手段として一定の機能を果たしているという側面は否定しにくいところです。

つまり論点は、資料を作っているかどうかではありません。その資料に載っている内容が、受け取った側の判断を変えるものになっているかどうかです。この一点で、同じ体裁の成果物が高級文房具と評されるか、費用に見合ったものと評されるかが分かれます。

「高級文房具」と呼ばれない人は何をしているか

第一に、論点を自分で立てられるかどうかです。依頼された資料を作るだけの受け身の姿勢ではなく、「本当に解くべきなのはこちらの問いではないか」と提示できるかどうかで、提供している価値の性質が変わります。発注の設計が曖昧なときに、それを組み替える提案ができる人は文房具扱いされません。

第二に、クライアントが持っていない情報を持ち込めるかどうかです。業界データ、他社の取り組み、現場担当者への聞き取りなど、社内では集まらない材料を足せているかどうかが、外部に依頼する意味を成立させます。社内資料の再構成だけでは、この条件を満たせません。

第三に、クライアントの意見に対して事実をもとに異なる見方を示せるかどうかです。相手の考えに同意して整えるだけの存在であれば、外部の専門家に依頼する必要はありません。関係を保ちながら反対意見を提示する力は、この職業の核心にある技能です。

第四に、実行のことまで考えているかどうかです。打ち手を出す段階で、社内の誰が動くのか、どの制約が障害になるのか、最初の一手は何かまで踏み込めているかどうかで、成果物の実用性は大きく変わります。この4点は、そのまま高級文房具と呼ばれないための条件と言い換えられます。

生成AIの普及で、この議論はより厳しくなる

資料の下書き作成、グラフ化、議事録の整理、公開情報の収集といった作業は、生成AIの活用によって短時間で処理できる範囲が広がっています。この変化は、作業の速さや資料の見栄えで価値を出していた領域の相対的な価値を下げる方向に働きます。

逆に価値が上がるのは、何を論点として設定するか、どの前提を疑うか、現場を見て何に気づくかといった部分です。これらは扱う情報が組織の内部にあり、対話や観察を通じてしか得られないため、作業の自動化では置き換わりにくい領域だと考えられます。

この意味で、「高級文房具」への批判は、AIの普及によってより鮮明に突きつけられることになります。作業部分の代替が進むほど、論点を立てる力だけが差として残るためです。資料を速くきれいに作れることを自分の強みとして語りづらくなる方向に、環境は動いていると言えます。

コンサルティング業界を志望する立場から見れば、これは対策の方向性を示す情報でもあります。作業の習熟よりも、曖昧な状況で問いを立てる訓練に時間を割いた方が、身につく力の寿命は長くなります。

志望者はこの揶揄をどう受け止めればよいか

就職や転職を検討している立場からすると、この批判は「入ってはいけない業界」を示すものではなく、「入った後に何を意識すべきか」を示すものとして読むのが実務的です。批判の中身を知っているかどうかで、入社後の立ち回りは変わります。

同じファームの中でも、指示された作業を丁寧にこなす仕事に留まる人と、論点そのものを動かす人がいます。この差は所属先の看板ではなく、個々の案件で自分に何を課すかによって生まれる部分が大きいとされています。若手のうちから「この資料は判断を変えるものになっているか」を自問する習慣が、分かれ目になります。

志望先を選ぶ際には、どのような案件でどんな役割を担うのかを面談の場で具体的に確認しておくと、入社後のギャップを減らせます。「戦略案件が多い」といった説明を受けた場合も、直近1年で実際にどんなテーマを扱ったのかまで踏み込んで聞いておくとよいでしょう。

面接でこの話題に触れる場合は、業界批判をそのままなぞるのではなく、自分はどこで価値を出したいのかを語れる状態にしておくことが大切です。批判を知っているという事実だけでは評価されず、それを踏まえてどう働くつもりかまで示せるかが見られます。

ケース面接で見られているのは、まさにこの部分

ケース面接で評価されるのは、資料の綺麗さでも知識量でもなく、限られた情報から論点を立て、構造化して実行できる打ち手にたどり着く過程です。この評価軸は、高級文房具と呼ばれるかどうかの分かれ目とほぼ重なっています。

一般的なフレームワークに当てはめただけの回答が評価されにくいのは、それがまさに高級文房具的なアウトプットだからです。枠を埋めた形は整っていても、その企業固有の事情を踏まえた示唆がなければ、判断材料としては機能しません。面接官はその違いを見ています。

逆に評価されるのは、前提を確認して問いの範囲を定め、対象企業の状況を踏まえて分解し、実行可能性まで踏み込んで打ち手を絞り込む回答です。選考で問われている力と、入社後に高級文房具と呼ばれないために必要な力は地続きになっています。

コンサルティング業界に関心があるなら、この揶揄を知ったうえで、まずケース面接の問題を1問解いてみるのが実践的な入口になります。自分の回答が「整理しただけ」で終わっていないかを確認する作業は、そのまま選考対策になり、入社後の姿勢の訓練にもなります。

まとめ

「高級文房具」は、高いフィーに対して社内でもできる資料作成しか提供していないコンサルタントを指す揶揄で、単価と提供価値のギャップから生まれた言葉です。ファーム側の稼働率の事情と、クライアント側の曖昧な発注の双方が要因になっており、資料作成そのものが無価値というわけではありません。分かれ目は、論点を自分で立てられるか、社内にない情報を持ち込めるか、事実で異なる見方を示せるか、実行まで踏み込めるかの4点にあります。生成AIの普及でこの差はさらに鮮明になるため、志望段階からケース面接で論点設定の訓練を積んでおくことが有効です。

あわせて読みたい: 「コンサルはきつい・やめとけ」の実態がわかるおすすめ記事5選コンサル流の資料作成・パワポ術がわかるおすすめ記事4選コンサルとは何か ― コンサルタント・コンサルティングとの違いをわかりやすく解説事業会社に入るべきか、コンサルティングファームに入るべきかコンサル業界用語集141選 ― 「アベる」から略語までまとめて解説

関連する練習問題

medium

マクドナルドの売上を増やすには

国内マクドナルド店舗の売上を伸ばす施策を提案してください。

解答例を見る
medium

カフェチェーンは地方都市に出店すべきか

出店可否を判断する評価軸と結論を示してください。

解答例を見る

関連する転職相談先

アクシスコンサルティング

コンサル転職に強い特化型エージェント。未経験から経験者まで幅広く、目先の求人紹介だけでなく中長期のキャリア相談に乗ってもらえるのが特徴。

比較を見る

ムービン

コンサルティングファームへの転職支援で知られる老舗の特化型エージェント。ケース面接の対策サポートやファーム別の選考情報が充実している。

比較を見る