飲食チェーンは値上げすべきか|ケース面接の回答例と進め方
原材料費が2割上がった定食チェーンは、値上げすべきかを判断してください。
自分で設定する論点
- 意思決定の期限、成功条件、撤退条件を自分で設定する
- 市場性、競争、収益性、実行容易性、リスクの評価軸を選ぶ
- 初期投資、既存資産、検証方法をどう扱うか考える
- 値上げの目的(利益維持か利益率維持か)を自分で定義する
面接官への確認例
- 現状のP/L(客単価800円・原価率35%・営業利益率5%、と置いてよいか)
- 競合(牛丼・定食チェーン)の値上げ動向はどうか
- 客層は価格感応度の高い日常利用層でよいか
行き詰まったときの段階ヒント
ヒント1を開く
値上げ判断の本質は「価格弾力性」: 値上げ率に対して客数が何%減るか。利益への影響は単価増×客数減の綱引き
ヒント2を開く
選択肢は一律値上げだけではない: メニューミックス(高単価品の追加)・サイズ・原価側の吸収など
ヒント3を開く
「いくら上げるか」と同じくらい「どう上げるか」(伝え方・価値の同時向上)が結果を左右する
考え方
- 値上げしない場合の利益毀損をまず定量化し、「何もしない」も選択肢でないことを示す
- 価格弾力性の仮定を置き、値上げ幅ごとの利益シミュレーションを行う
- 一律値上げ以外の選択肢(ミックス・付加価値・原価吸収)と組み合わせて設計する
解答の流れ
- 前提: 客単価800円・原価率35%・営業利益率5%の定食チェーン。原材料2割上昇は原価率7ポイント悪化=利益がほぼ消える状況と試算する
- 何もしない場合: 営業利益率5%→▲2%で赤字転落。つまり「値上げするか」ではなく「どう転嫁するか」の問題と再定義する
- 弾力性の検討: 競合も同じコスト圧力で値上げ済みなら、相対価格は変わらず客数減は限定的(5%程度)と仮定できる
- 打ち手: A案 主力メニューを800→860円(+7.5%)に改定し、同時に無料の付加価値(ご飯おかわり・味噌汁具増し)で「値ごろ感」を守る、B案 高単価メニュー・セットの投入でミックス単価を上げる、C案 原価側の吸収(メニュー構成見直し・食材切り替え)を並行
- 結論: 値上げすべき。ただし一律でなく「主力+7%程度の改定×付加価値の同時向上×ミックス改善」の組み合わせで、客数減5%以内なら利益は回復する
回答例
【前提】客単価800円・原価率35%・営業利益率5%の定食チェーンで、原材料費が2割上がったとします。まず影響を試算すると、原価率は35%→42%へ7ポイント悪化し、営業利益はほぼ消えます。つまり「何もしない」選択肢はなく、問いは「値上げすべきか」ではなく「コスト増をどう転嫁・吸収するか」です。 【分析】値上げの成否は価格弾力性(値上げ率に対する客数減)で決まります。今回は業界全体が同じコスト圧力を受けており、競合も値上げしているため、相対的な価格ポジションは変わらず、客数減は5%程度に収まると仮定できます。単純計算では、7.5%の単価改定で客数が5%減っても売上は微増し、原価率悪化分をほぼ相殺できます。 【打ち手】1. 主力メニューを800円→860円へ改定し、同時にご飯おかわり無料・味噌汁の具の充実など、原価の軽い付加価値を付けて「値ごろ感」を守る。2. 高単価の期間限定メニューやセットを投入し、平均単価をミックスで引き上げる。3. 並行して、食材の切り替え・メニュー数の絞り込みで原価側でも2〜3ポイント吸収する。 【結論】値上げすべきです。ただし「一律に上げて謝る」のではなく、(1)主力+7%前後の改定、(2)付加価値の同時向上、(3)ミックスと原価改善の併用、という設計で行います。実施後は客数・客単価を週次で追い、客数減が想定の5%を大きく超えた店舗から原因を検証します。
打ち手の評価表
| 打ち手 | Impact | Feasibility | 期間 | リスク |
|---|---|---|---|---|
| 主力+7%改定×付加価値の同時向上 | 高 | 高 | 3カ月 | 客数減が想定を超える |
| 高単価メニュー投入によるミックス改善 | 中 | 高 | 3〜6カ月 | オペレーション複雑化 |
| 値上げせず原価吸収に専念 | 低 | 中 | 6カ月 | 品質低下による客離れ・利益不足 |
よくあるミス
- 「客が減るから値上げすべきでない」と、赤字転落の定量化をしない
- 値上げ幅の数字を置かず、方向性だけで終える
- 伝え方・付加価値という「どう上げるか」の設計がない
面接官の深掘り質問
客数が想定より15%減りました。どうしますか?
価格を戻すのは最終手段。まず減少が全店か特定立地か、離反層は誰かを特定し、クーポンでの呼び戻し・ランチ帯の値ごろセットで価格階段を作る、と診断→対処の順で答える。
そもそも日本企業は値上げが下手と言われます。なぜですか?
デフレ期の成功体験、価格=誠実さという規範、値上げ→客離れの恐怖の自己実現。価値向上とセットの価格改定という発想の欠如を構造的に説明する。
評価ポイント
- 「何もしない」場合の赤字転落をまず定量化できた
- 価格弾力性と競合の同時値上げという環境を織り込めた
- 一律値上げ以外の選択肢(付加価値・ミックス・原価吸収)を組み合わせられた
- 実施後のモニタリング設計まで含められた